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広域八戸人 藤井あつこさん
広域八戸人 藤井あつこさん
小澤 征爾さんが病をおして指揮棒をふるう。食道癌を克服し腰の病をねじふせて若手の音楽家に檄を飛ばす。
十六分音符が大事だと、何度も繰り返すオペラ「カルメン」のワンシーン。
執念だ。なんとしても、自分が体得したものを若手につなぐ。NHKが見せたTVに思わず頭が下がった。
宝生流という能の一派がある。
これに魅せられたのが藤井あつこさん。この人は能を次代につなげようと、若人を見つけるたびに勧誘の声をかける。
能は十四世紀後半に世阿弥を得て、大きく飛翔。これが観世流、藤井さんは宝生流、盛岡南部は宝生流の六世新之丞の弟錠之助を召し抱えた。ために盛岡に宝生がしっかりと根付いた。
能は『謡十年、型三年』と言われるほど、時間を要する芸能、また、この謡本を斉唱する謡は登場人物の台詞と状況を説明。
この詞章がよく出来ている。この素晴らしさを教えてくれたのが藤井さん。
東北宝生流の会を治めておられる。
この藤井さんが小澤征爾さんは食道癌、同じように骨の癌に罹患。面をつけずに舞うことを仕舞と呼ぶが、藤井さんの凜とした姿はいまだに目の底に浮かぶ。が、癌を患って以来、背筋が伸びないことを嘆かれる。
外国人も能の船弁慶、土蜘蛛には絶賛の声を上げる。
薙刀を手にした平知盛幽霊
「あら珍らしやいかに義経、思ひもよらぬ浦浪の「声をしるべの出舟の「知盛が沈みしそのあり様に「又義経をも海にしづめんと、夕浪に浮べる長刀執り直し、巴波の紋あたりを払ひ、潮を蹴立て悪風を吹きかけ、眼もくらみ心もみだれて、前後を忘ずるばかりなり、「その時義経少しもさわがず「その時義経少しもさわがず、打物抜き持ちうつゝの人に向ふが如く、言葉をかはし戦ひ給へば、弁慶おしへだて
と地謡(じうたい)とよばれるコーラスが物語を推し進める。
千年の歴史を持つ能、これをなんとしてでも後世に伝える。藤井さんの執念が癌を押して生きさせる。
藤井さんは八戸市で出会った女性で頭脳明晰NO1。今から四十年も前、金物を買いにサウンドクリエイトの久保田社長と出かけた。
十六日町の角に、その店はあり、店名は三鉄。百貨店の三春屋の分家、藤井一族が福島の三春から八戸に来て呉服商で財をなした。藤井与惣治と歴代称した。
その分家で三春屋の三と金物屋で鉄とでもつけたのか。後年聞いたところでは、金物ではなく最初はお菓子や、ケーキ屋のようだった。
金物屋で財を成したのがサンデー、吉田昌平氏、この人も人物。金物屋の扱い品目は雑多、覚えるだけでもかなり煩瑣な作業だ。藤井さんは八戸高校出身、もとより頭脳は優秀。
この人からは幾つも教えられた。
「商売をするなら全国を相手にするようじゃなければダメ、全国統一価格のものを扱うこと、ローカル価格じゃカネ儲けは出来ないわよ、全国統一価格は株の売買」
なるほどと思った。鋭さに度肝を抜かれた。
また、こうも言った。
「栄耀栄華なんてのは一夜の夢、三春屋も潰れた、泉山銀行を興した一族も滅びた、でもね、泉山一族は自分たちの歴史を冊子にして残したのよ、家も家宝も財産も持ち続けるのは至難な技、でも、泉山は自分たちの歴史を本にした、これは立派だったわね」
「三春屋は自分たちの歴史を伝えることをしなかった。家系図も持たなかったが、野辺地にそれがあった。残そうと努力しないと残らないものなのよ」
能を極めたからこそ、言える言葉だ。
舞、謡、囃子の三つで能は成立。
「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。ひとたび生を得て滅せぬもののあるべきか」
能の敦盛の一節、信長が舞ったとして有名。
藤井さんの身体の中には、この必衰の「もののあわれ」が流れているのだろう。
この人の母親が恬淡として好人物だった。
おしんが奉公した加賀屋の大奥様・八代くに役を長岡輝子が演じた。堂々たる風格と気品が圧倒する。是々非々を通す女、この長岡は盛岡の産。南部の女の魂なのだ。
その長岡輝子と同じように、藤井さんのご母堂は立派な気品の持ち主で、なおかつ、気さくだった。
金物屋を整理し、その跡を駐車場とし、母娘で財産を守った。が、それも面倒と土地を貸して、今はそこにコンビニが建っている。ご母堂も亡くなり、財産の管理、癌になったからその相続をどうするかと、浮き世の諸問題の大波小波の中、謡をお弟子に伝えながら、癌と闘う。
でも、八戸市には癌専門の医師がいない。是非とも東京の癌研で診てもらいなさいと勧めている。カネが無いのじゃない、この世とあの世を分けるのは生命力と良い医師の診断だ。
背骨を治してもう一度、しゃんとして仕舞を演じたい。
この精神があり続ける限り、藤井さんは死ねない。
天下の指揮者小澤征爾、東北八戸の地には藤井あつこ、共に伝えるべき魂を持つ。


by jpn-kd | 2019-05-02 14:46 | 広域八戸人
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