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八戸の中国残留孤児3
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五戸開拓団、安らかに
満州荒野・死の旅の記録
遺族会が殉難碑建立
デーリー東北新聞昭和三十八年九月十四日
白樺の丘人影なし
襲う暴民、絶望に子を捨てる親
生存者、一割の二十六人だけ
終戦の年八月、異国は遠い満州の丘に望郷の夢かなわぬまま命を落とした妻と愛児、そして友人の「花なき墓標」を慰める殉難碑が五戸郷開拓遺族会の手で五戸町神明宮境内に建立された。これは国策に従い、満州に乗り込んだ大青森郷開拓団が、ソ連との開戦で荒野に流浪すること七十余日、その死の記録である。
 五戸町切谷内の川崎文三郎さん(四九)を団長とする二百三人(家族とも)が五戸郷開拓団として旧満州国黒河省遊河県双河鎮地区に入植したのは第二次大戦さなかの十八年五月。黒龍江の前方にソ連を控えたところで、本県各地から他に入植者があり、合わせて三百五十戸、四百七十人の大青森県郷だった。五戸郷開拓団は五戸をはじめとして八戸市、田子町、名川町、福地村、青森市、十和田町から集まった人たちで組織されたが五戸地方の人が大部分で時の五戸町長川崎七五郎氏が主唱し、なり手のなかった団長に女婿(じょせい・むすめむこ)の文三郎氏を選んだ。開拓団は希望を持ち原野を開拓し平和を築いたが、戦局は風雲を告げ、悲劇の日が意外に早く訪れた。二十年八月六日、この日降った雨は八日朝まで続き、ソンピラ河は七十年来の洪水となった。
 二月以来団にも続々召集令が舞い込み、川崎総合団長はじめ青壮年の戸主はほとんど応召し、幹部七人と婦女子ばかりが残されている状態。洪水による交通遮断と日ソ開戦の報は身震いにする思い。国境第一線の開拓団とあってソ連の侵攻も間近と予想されたため、無理を承知で南方三百里の北安まで徒歩避難を開始。
 十三日夜、着の身着のまま、まず三州義勇開拓団に足を向けたが、すでに満人に荒らされ惨憺たるありさま、しかも前方にソ連軍騎馬隊がいることをオロチョン族から聞き前途への不安はつのるばかり。このため五道林をあきらめ、方向を千古の密林に求める。湿地帯を進むこと四、五日、膚を刺す水、胸まである泥にみな極度に疲労した。七日目に丘に出たが最も恐れていた雨が降ってきた。雨具のない一行はぬれねずみ。夜は草を集めてその上に寝るが寒さでふるえが止まらない。食糧も不足、馬を殺して分けたが大人数で指先ほどしか当たらない。栄養失調、疲労、水虫、湿疹、胃腸病が続出し痛さにたえかねて泣く子供の声でみなが悩まされた。
 二十日も旅が続くと食糧は無くなり、草の根、木の皮と何でも食べた。大切にしてきた食塩が雨で溶けて流れた。婦女子の中に絶望のあまり子供を殺す者も出た。路傍に倒れて死亡する者、このままでは全滅。
 食糧を確保するために先発隊を出す。病人、幼児など百六人を高原に残し前進。残留者には十日間の食糧を残す。白樺の小屋を造る。夫と妻、子がここで別れた。九月三日で木々は色づいていた。これが永遠の別れとなった。迎えはとうとう来なかった。
先発隊は樹海を沼地をさまよい人家を探すも見あたらず、最後の馬肉を配る。ひろびろとした裾野に入ると脱落者が続出し、自分一人歩くのが精一杯。子供は生きたまま捨てられた。
 十月十一日、匪賊の襲撃をのがれ四海店にたどりつくが暴民に囲まれ筆舌に尽くしがたい暴行を受ける。どうにか交渉がまとまり二十四日ハルピン向け列車に乗車、七十五日の苦難の旅に別れを告げた。五戸郷二百三人のうち生還者はわずか二十六人。
 応召していた川崎団長は新京でこの話を聞いた。調査に乗り出したが白樺の丘に残された百六人の姿はなかった。
 殉難碑の除幕式はこのほど遺族二百余人が集まってしめやかに行われた。碑に刻まれた苦難の記録は生々しい。白樺の墓標に代わるこの碑に十八年ぶりに花を添える川崎さんら遺族は、肉親、友人の苦難に思い出の涙を新たにした。
by jpn-kd | 2009-05-25 06:53
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